コネクテッドカー産業への挑戦

メーカーがインターコネクション(相互接続)を介してよりスマートなサービスを提供する方法

Kyle Chien

デジタルトランスフォーメーションによって、あらゆる産業の再構築が進んでいます。新しいテクノロジーの台頭と、より高速で優れたサービスを提供するスタートアップ企業の出現によって、歴史のある企業が打ち負かされようとしています。このことがもっとも顕著なのは、伝統的に製造業が独占してきた部門です。多額の資本投資が必要とされる新規参入を阻むことで、メーカーは今までほとんど競争することがなかったかもしれません。しかし、クラウド、モバイル・人工知能(AI)・モノのインターネット(IoT)などのデジタル技術が、いわば「民主化の力」となっています。例えば、自動車業界内では、革新的なスマートモビリティのオプションやコネクテッドカーの機能を提供する新規参入者によって、急速に進化する競争環境となってきており、従来の自動車メーカーが生き残るための順応能力が試されています。この「ゲーム」で生き残るには、よりスマートで個人向けにカスタマイズされたサービスを提供するため、見えないところでパートナー間での連携とリアルタイムのデータ交換が必要です。このような理由から、主要なビジネスパートナー間のダイレクトかつプライベートなトラフィック交換であるインターコネクション(相互接続)の需要が高まっています[i]。実際に、Global Interconnection Index(GXI)第3版(エクイニクスが発行する報告書)では、2022年までに製造部門がインターコネクション(相互接続)の全帯域の11.6%(1,547 Tbps)を占めるようになると予測しています。

自動車産業が行き着く先は?

包括的でサービス指向のモデルへと急速に変化を遂げる中で、McKinseyとPwCはともに自動車産業のバリューチェーンにおける大きなディスラプション(創造的破壊)を予測しています[ii] 。2023年までに、自動車業界の収益増加の46%がデジタルサービスによるものだと予測しています[iii] 。また、PwCが行った別の調査では、2030年までに従来型の自動車販売、部品やアフターサービスによる利益の占有率が自動車市場全体の70%から55%に縮小し、その一方で、非従来型の利益の占有率は5%から25%に拡大すると予測しています。「ゲーム」で生き残り、顧客の期待に応えるために、自動車メーカーはITとビジネスオペレーションを、機敏性、リアルタイムのカスタマーエンゲージメント、パートナー関係をベースとしたコラボレーションとスケーラブルなサービスデリバリへと変革する必要があります。

流通 – ブリックからクリック(実店舗から電子商取引へ)

これまで自動車メーカーは、販売と物流についてはフランチャイズのディーラーのネットワークに任せて、技術改善に注力してきました。しかし、顧客の期待、希望、その他のトレンド(自動運転車/コネクテッドカー/電気自動車/シェアードカー(ACES)への変化)によって、利益率が低下し、自動車メーカーやカーディーラーはビジネスモデルを再検討するようになっています。
これまでの典型的な自動車購入までの流れは次の通りです。数店のカーディーラーを回って、色々な車を見て試乗します。希望の車種が決まったら、販売員と価格やローンの交渉を開始します。購入までの全てのプロセスを終えてカーディーラーを後にするまで、9時間程度かかることもありました。
これとは対照的に、モバイルとWebの技術はスムーズな購買体験への道を切り開いてきました。Autotrader、Cars.comやCostCo Auto Programなどのデジタルチャネルを使うことで、車の検索や比較が可能になり、最高のお値打ち品を見つけることができます。購入までの準備ができたら、Carvana、Shift、Vroom、Roadsterのようなディスラプター(既存のビジネスに対する破壊者、スマートなサービスの創設者)に変えることで、明瞭な価格でオンラインにて全購入プロセスを完了できます。従来のディーラーもまた、オムニチャネル購入体験を提供することで順応し、対応を試みています。これにより、国内のどこにいても希望のブランドと構成をオンラインで検索し、希望の車種と車を最寄りの場所に納車することができます。また、購入した車の自宅への納車や、何時間もかかっていたペーパーワークや価格交渉を省くことも可能です。このようなオンラインの購買体験の「一貫性と信頼性」を確保するには、場所を問わずエコシステムのパートナー間のリアルタイム連携とデータ交換を実現する統合デジタルプラットフォームが必要です。

無線による保守とアップグレード

デジタル技術は、自動車サービス自体も変化させています。これまでに自動車メーカーがリコールを行う必要がある時、各所有者にリコールの通知が郵送され、地域のカーディーラーに修理の予約を取る必要がありました。その代償として、時間や費用を無駄にし、顧客満足度を犠牲にしてきました。現在では、自動車メーカーはワイヤレス接続を内蔵することで、メンテナンスのために所有者が車をカーディーラーに持ち込む必要もなく、無線(OTA)でアップデート(最新の状態)にすることが可能になりました。OTAアップデートにより、自動車メーカーはサービスのアップデートだけでなく、盗難防止カメラの機能強化やエンターテインメントオプションなどの新機能も提供できるようになりました。
個人的な経験をお話します。私が1年ほど前にTesla車を購入した時点では、監視システム機能は搭載されていませんでした。しかし、監視システム機能が利用可能になると、TeslaはOTAアップデートを実施し、私の車のリアカメラでこの強化されたセキュリティ機能が使えるようになりました。興味深いことに、最近私が観戦していたバスケットボールの試合で銃撃事件があり、私が車に戻ると警察官が近づいてきて私の監視カメラがオンになっているかどうか聞いてきました。そして、車の監視カメラが捉えていた容疑者の映像を警察に提供することができました。私たちの車やデバイスがよりコネクテッド(接続)されるようになれば、より安全な地域社会への扉も開かれるはずです。

10年後に、自動車業界は、相互に補強しあう4つの主要トレンド(自動運転/コネクテッドカー/電気自動車/シェアードカー(ACES))によって、過去100年では見られなかったほどの変化に直面するでしょう。その結果、ユーザーの行動やモビリティに対する好みが変化し、価値が変化し、革新的なビジネスモデルが生まれ、自動車業界への新規参入者が生まれるだろう。 McKinsey

イノベーションが「ゲーム」の主戦場に

イノベーションのスピードは、今日の自動車メーカーにとってもう一つの重要な課題です。その一例が、自動運転のディープラーニングのスタックです。ディープラーニングの特性を考えた際、現在何百万ものスタートアップ企業や従来の企業が自動運転ソフトウェアモデルの開発に取り組んでいます。ここには、複数のクラウドサービスプロバイダや、これらのモデルをトレーニングするためのアナリティクスSaaSの分析サービスが参加するケースをよく目の当たりにします。そのため、メーカーがこれらの企業のサービスを利用したり取得したりする時は、これらのテクノロジーの基盤となるデジタル統合されたエコシステムに適合する必要があります。

これらのデジタルプラットフォームには、柔軟で適応力を備えたスケーラブルなインターコネクション(相互接続)のインフラが必要です。オムニチャンネルで「コネクテッド」関連のサービスが普及するにつれ、Interconnection Oriented Architecture™(IOA™)のアプローチをベースにしたインフラ(下図で参照)によって、企業が効率的かつ効果的に統合、分析し、リアルタイムの在庫情報、重要な製品のアップデート、そしてデジタルコネクテッドのカスタマーエクスペリエンスの提供を実現することができます。

各自動車メーカーにとって、自社のデジタルトランスフォーメーション戦略とは?

プライベートのインターコネクション(相互接続)がどのように世界中の製造業/非製造業を強化しているのかについては、Global Interconnection Index(GXI)第3版を御覧ください。
また、業界のリーダー達がどのようにデジタルエコシステムを活用して、コネクテッドカーやデジタルサービスのニーズを対応しているかについては、自動車産業-デジタルエッジプレイブックも併せて御覧ください。

 

[i] 相互接続帯域幅は、キャリアニュートラルコロケーションデータセンター内の分散型IT交換ポイントで、さまざまなパートナーやプロバイダーとプライベートおよび直接トラフィックを交換するためにプロビジョニングされた総容量として定義されます。

[ii] McKinsey, Mapping the automotive software-and-electronics landscape through 2030(McKinsey、2030年までの自動車のソフトウェアとエレクトロニクスの展望のマッピング)ランディングページレポート, July 2019; PwC, The 2019 Strategy Digital Auto Report, 2019

[iii] McKinsey, Disruptive trends that will transform the auto industry(McKinsey、自動車業界を変革させる破壊的なトレンド)ランディングページレポート (PDF)、2016年1月。