インスピレーションとイノベーションの国として知られる日本は、常に新しいアイデアとテクノロジーで世界を魅了してきました。今回の「リーダーを知る」シリーズでは、私ことアジアパシフィック地域担当プレジデントのジェレミー(以下JD)が、エクイニクス・ジャパンの小川久仁子代表取締役社長(以下小川)に、日本のIT業界の動向や、彼女のキャリアに影響を与えた経験について色々伺います。
JD 「小川さんがエクイニクスに入社してから半年以上が経ちました。最初の100日間で特に印象に残ったことを3つ教えてください。」
小川 「まず初めにカルチャーです。エクイニクスの素晴らしいカルチャー、とりわけ、米国の本社から発せられる全世界の社員に向けたメッセージに何度も感動しました。何故こんなに感動するのか色々考え、いくつかのFindingsがあることに気づきました。まず、そのメッセージの内容です。いわゆる杓子定規なものではなく、心のこもったメッセージなのです。また、そのメッセージが絶妙なタイミングで社員に向けて発信される点です。口先だけでカルチャーを語る会社とは全く異なり、全社をあげてカルチャーにかなりの時間を費やしていること、そして社員の誰もがこのカルチャーこそがEQのDNAそのものだと認識していること、このEmployee Engagementの高さに心から感動しました。
二つ目は、データセンタービジネスへのイメージが180度変わったことです。私の従来のイメージは、サーバーファームをベースとしたコロケーションビジネスという理解だったのですが、都心型で、ネットワークリッチ、クラウドハブとしての役割をもつ、いわゆるDXを下支えするプラットフォームビジネスであること、そしてオンプレミスのデータセンターに取って代わるものではなく、むしろオンプレミスに付加価値をつける役割を担っているとわかった時は、なるほどと納得しました。
三つ目は、日本への投資です。私の担当しているメトロ(都市圏)は東京と大阪ですが、東京は全世界のメトロの中でも高いビジネスポテンシャルがあります。そして大阪も大きな成長可能性があり、戦略的に重要なメトロです。エクイニクスのグローバルカバレッジの中で、一国のメトロ全てが高い戦略的重要性を持つ国は珍しいといえます。その意味で日本のビジネスには大きな期待が寄せられていますし、私は日本の責任者として大きな責任も感じています。この社内外からの高い期待に答えるべく、日本チーム一丸となって、ビジネスを牽引していきたいと考えています。」
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ダウンロードはこちらからJD 「日本企業がグローバル市場に進出するケースが増えています。日本企業はどのような課題に直面しており、どのような対処が可能だと考えますか。」
小川 「日本企業は以前からイノベーション能力の高さで知られていますが、俊敏性(アジリティ)、データコンプライアンス、そしてネットワークの遅延(レイテンシー)が海外展開の足かせとなってきました。そのため、今、日本企業は、グローバル展開に必要なワールドクラスのデジタルインフラストラクチャーを提供できる我々のような高い信頼性を持つパートナーを必要としています。世界各地にサービス展開している我々のコネクテッドデータセンタープラットフォームを利用することで、企業はインフラを迅速にローカライズでき、高速、低遅延、セキュアな接続性を手にして新しい製品やサービスを新しい市場に迅速に投入することができます。
たとえば最近では、楽天モバイルの子会社であるRakuten Mobile Singapore Pte. Ltd.へのサービスを提供開始しました。楽天モバイルはRakuten Communications Platform(RCP)を世界中の通信事業者やエンタープライズカスタマーに提供するためにPlatform Equinix®を採用しました。Platform Equinixを基盤とすることで、2,900社以上のクラウドサービスプロバイダー(CSP)と1,800社以上のネットワークサービスプロバイダー(NSP)からなる多様なエコシステムと相互接続することができます。また、オンデマンドでエッジ上に仮想ネットワークサービスを数分間で展開し接続できるため、インターコネクション帯域のダイナミックな需要変化やネットワークスパイクに対応し、世界中の潜在的なビジネスチャンスを有効活用することができます。」
JD 「日本は世界最大級のデータ集積都市であり、ハイパースケーラーにとって重要な市場です。2020年初め、エクイニクスは、日本でハイパースケーラーデータセンターを開発するためにGICと合弁事業を設立したことを発表しました。日本のxScale市場についてどのようにお考えですか。」
小川 「日本は世界最大級のデータセンター市場であることは間違いありません。しかし、他の先進国と比較すると、遅れている分野もあります。IMDが発表した「2020年世界デジタル競争力ランキング(IMD World Digital Competitiveness)[1]」では日本は27位に位置し、企業の俊敏性やビッグデータ活用に関しては63カ国中最下位でした。理由はいろいろありますが、その一つとして、日本の企業のシステムの老朽化がDXの大きな障壁となっていることがあげられます。例えば、20年以上の老朽化したシステムが全体の20%も存在し、10年以上のシステムとなると40%の割合を占めます。
また、ビジネスにおいても、ミーティングは対面で行うという商習慣が根強く残っていました。社内でも対面の会議ですし、お客様とのミーティングも対面が前提でした。
ところが、コロナを機に日本ビジネスの前提条件であった“対面”から“非対面”にシフトせざるを得ない状況になり、この“非対面”がDXを加速させるドライバーとなっています。
特に政府の行政クラウドのプラットフォームとしてAWSが採用されたことは大きなニュースでした[2]。DXの推進には、クラウドの活用が第一ステップであることを踏まえると、私たちのお客様であるハイパースケーラーが提供するサービスへの需要は今後確実に高まるでしょう。エクイニクスは今年東京と大阪にxScaleデータセンターを開設します。これはエクイニクスが日本のDXを支えて加速するという大きな役割を担っていることを意味します。」
JD 「エクイニクスに入社する前は、世界最大級のテクノロジー企業に勤務されていました。その経験は、自身のリーダーシップスタイルの形成にどのように役立ちましたか。」
小川 「様々な学びがありましたが、得たものの一つ目は、ロジカルシンキングです。とにかく何をするにおいても論理的思考を求められました。私が新入社員のころ、先輩や上司から、言いたいことを1分でまとめるように、と常に言われていました。キャリアを積むにつれ、その思考回路の重要性が理解できるようになり、いつの間にか、私自身も部下との会話やレビューの際の口癖になっていました。ロジカルシンキングという世界共通でのメソッドを通じて、ビジネスのDNAを叩き込まれたのだと思います。
二つ目は、コミットメントです。私が学んだコミットメントの解釈は、「目標達成のために全身全霊で取り組む」と言うことです。目標がどんなに高くセットされていても、あらゆる方策を考えて実行する。これは、現在の私のスタイルの原点であり、強みの一つでもあります。
最後は、チーム・ビルディングです。同じ目標を共有し、それぞれの担当エリアにおいて主体的に実行しながらも、お互いの協力を通じ、最高のパフォーマンスを生み出す組織づくりです。その前提としてカルチャーが重要な土台となることは言うまでもありません。言うのは簡単、実行するのは大変ですが、若い時から比較的大きな組織を任せてもらえていたので、私の強みの一つとなっています。」
JD 「次世代の才能ある女性人材をサポートすることを強く提唱していますが、若い女性リーダーに何かアドバイスをお願いします。」
小川 「私の体験談をお話ししたいと思います。私がまだリーダーとしての経験が浅かった頃、幸運なことに素晴らしいメンターに出会うことができました。メンターからは耳の痛いことも言われましたが、振り返るとその言葉は今でも自分の中では心に残る教えとなっています。つまり、耳の痛いことを指摘してくれるメンターもしくは誰かをできれば持ったほうがいい。また、その指摘に対して自分を変えられる素直さを持ち合わせて欲しいと思います。」
JD 「最後の質問です。小川さんについて、私たちがまだ知らないことがあれば教えてください。」
小川 「私は韓国ドラマの大ファンです。毎日寝る前に見ています。ストレス解消にとても役立っています。」
今回のインタビューを通し、小川さんと日本市場について、より知ることができました。今後、彼女や彼女のチームと一緒に仕事をし、日本のお客様のグローバル展開をお手伝いすることをとても楽しみにしています。次回のインタビューもどうぞお楽しみに。
[1] https://www.imd.org/globalassets/wcc/docs/release-2019/digital/imd-world-digital-competitiveness-rankings-2019.pdf
[2] https://www.datacenterdynamics.com/en/news/japan-pick-aws-government-cloud-projects/