Equinix Fabric™を活用したAzureクラウドの耐障害性向上のための設計

Azure ExpressRouteとEquinix Fabricの冗長で多様なインターコネクション(相互接続)により、高可用性を備えたグローバルなクラウドリソースを実現

Brian Petit
Equinix Fabric™を活用したAzureクラウドの耐障害性向上のための設計

企業や組織のお客様は、クラウド移行や導入のための広範な戦略を推進する必要性に迫られています。クラウド機能の強化とともに高可用性と即時アクセスに対する要求が、ほぼすべての基幹産業で広く見受けられる傾向となっています。この変革の傾向を通じて明らかになったことは、進化するクラウドへの移行に対応したハイブリッドマルチクラウド戦略が台頭していることです。IDC Researchによると、インフラストラクチャニーズを満たすために、オンプレミス/専用プライベートクラウド、複数のパブリッククラウド、レガシープラットフォームを組み合わせて利用する企業の割合は、2021年までに90%に達します。[i]

より大規模で優先度の高いワークロードが毎日クラウドに移行していることを受け、エクイニクスのお客様環境とクラウドプラットフォーム間の単一障害点を排除する、回復性に優れたネットワーク設計が必要となっています。即時アクセス、高可用性、低レイテンシに対する要求は、企業のIT環境に重くのしかかり、システム停止の頻度がそれに応じて増加し、コストのかかるオペレーションダウンタイムが生じることは事実上避けられません。このような状況の中、効果的で信頼性の高いクラウド展開のための強固な基盤を確保するためには、ネットワーク最適化手法を適用することが非常に重要です。

進化を遂げるプライベートおよびパブリッククラウド環境に対応できるようお客様コミュニティを支援することは、エクイニクスの最優先事項であり、この目標達成を支援する主要なクラウドパートナーの1つがMicrosoft Azureです。

Equinix FabricとAzure ExpressRoute

エクイニクスとMicrosoftのソリューションにより、Azureで動作するアプリケーションのパフォーマンスを最適化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させて、職場の生産性を高めることができます。

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Equinix FabricAzure ExpressRouteが高可用性を強化

エクイニクスは2013年以来、33の都市圏にあるEquinix International Business Exchange™(IBX®)データセンターで利用できるようになったAzure ExpressRouteを使用し、Azureへのクラウド接続を可能にしてきました。最近では、Platform Equinix®上のAzure ExpressRouteを介してMicrosoft Azureへのプライベートネットワークアクセスを拡張し、ベルリン、ボゴタ、キャンベラ、ドバイ、リオデジャネイロ、ソウルを含む6つの新しいグローバル市場のお客様にサービスを提供しています。拡張されたサービスは、Azure VMwareおよびSAP S/4HANAソリューションを含む、さまざまなAzureサービスへの直接かつオンデマンドのネットワークアクセスを企業に提供します。これにより企業は、オンプレミスのVMware環境をAzureに移行または拡張して、ハイブリッドクラウドへの変革を促進できます。

Microsoft Azureを使用したクラウド接続の取り組みを通じて両社が重点を置いたのは、共通のお客様のために高可用性(HA)リソースを確保することでした。高可用性のサービスを実現するための共同イニシアティブの中核となるのが、Equinix Fabric™とMicrosoft Azure ExpressRouteです。

  • Equinix Fabric HA—Equinix Fabricは、冗長な物理ポートを使用して回復性を組み込むように設計されています。これによって、ソフトウェア定義のインターコネクション(相互接続)を基盤とした、耐障害性の高い相互接続型グローバルネットワークが実現します。Equinix Fabricは、弾力性に優れたトポロジを活用して変化に対応し、接続の中断を防ぎます。また、一貫性のある接続性原則によって管理され、Equinix Fabricポートと仮想接続をローカルおよびグローバルに展開し、多様性を実現しています。
  • Azure ExpressRoute HA—Azure ExpressRouteも同様に高可用性を実現するように設計されており、Microsoftリソースへのキャリアグレードのプライベートネットワーク接続を提供します。設計上、Microsoftネットワーク内のExpressRouteパスに単一障害点はありません。Microsoftは可用性を最大化するために、ExpressRoute回線を高可用性に設計するとともに、ExpressRoute回線の冗長性をネットワーク全体でエンドツーエンドに維持することを推奨しています。[ii]

Azure ExpressRouteについての簡単な説明:組織のオンプレミスインフラストラクチャとMicrosoft Azureデータセンター間のプライベート接続を提供するサービスです。ExpressRouteを使用すると、Microsoft AzureやMicrosoft 365などのMicrosoftクラウドサービスへの接続を確立できます。

高可用性をサポートするMicrosoft Azureアーキテクチャの重要な要素として、「ワークロードの質を向上」させるための指針をまとめたAzure Well-Architected Frameworkがあります。[iii]このフレームワークは、コスト最適化、運用の卓越性、パフォーマンスの効率化、信頼性、セキュリティという、卓越したアーキテクチャのための5本の柱で構成されています。エクイニクスにとって、Microsoftとのコラボレーションにおける重要な目標は、設計理念をこのフレームワークで定められた基本的な原則と一致させることにあります。

Azure Networkingのプリンシパルプロダクトマネージャを務めるJon Ormond氏は、次のように述べています。「当社は、Azure ExpressRouteのほぼ開発当初からエクイニクスと協力してきました。テクニカルチーム間の長年にわたる協力関係緊密な連携は、堅牢で信頼性が高く、回復性に優れたアーキテクチャパターンを生み出しました。これらのアーキテクチャはAzure Well-Architected Frameworkの原則に基づいております。ExpressRouteに関するMicrosoftの多くのベストプラクティスの推奨事項の多くは、これらに基づいています。」

Equinix FabricAzure ExpressRouteのアーキテクチャの鍵となる冗長パス

エクイニクスをベースとしたAzure ExpressRouteの導入では、Equinix Platform環境の内部とエクイニクスの外部の両方で、サービス要素間の冗長な相互接続に重点が置かれています。サービス損失のリスクを最小限に抑えて、サービスレベルアグリーメント(SLA)要件を満たすには、Equinix FabricとAzure ExpressRouteの導入では、最低限、互いのHAレベルを同等に合わせることが必要です。Equinix Fabric導入の観点から見ると、これは、Equinix Fabricポートとお客様ルーターがそれぞれ2つ必要であることを意味します。Equinix/Azure ExpressRoute展開の主なユースケースには、オンプレミスネットワークをAzureクラウドリソースに拡張することや、HAネットワークアーキテクチャを導入することが挙げられます。

推奨される最小の冗長設計:Equinix Fabric デュアルポート、お客様ルーター2

Equinix Fabricへの接続と、Equinix Fabric上の他のお客様またはパートナーへの仮想接続には、デュアルポートセットアップを常に使用することをお勧めします(必須ではありません)。これにより、冗長ハードウェアと多様なパス設計を最大限に活用できるようになります。エクイニクスでは、この設計を「ポートプライオリティ(優先順位)」と呼び、「プライマリ」ポートと「セカンダリ」ポートを区別しています。

この推奨設計は、Equinix FabricAzure ExpressRouteの両方のSLA要件を満たしており、99.999%以上というEquinix Fabric(デュアルポート)の可用性と99.95%以上というAzure ExpressRoute専用回線の可用性を提供します。

プライマリポートとセカンダリポートはあらゆる点で同等です。その名前が示すとおり、回復性が設計に組み込まれています。正しいデュアルポート構成では、プライマリポートとセカンダリポートの両方が使用されます。

複数の都市圏にまたがるリモート接続の場合、ポート優先順位の原則はエンドポイントにのみ適用されます。グローバルに相互接続されたエクイニクスのネットワークでは、ネットワーク独自冗長化メカニズムが代替して可用性を確保します。

次の図は、基本的な冗長設計を拡張した2つの例を示しています。最初の拡張設計のEquinix Fabricは、同じマーケット内の2番目のExpressRoute PoP(Point of Presence)経由で1つのAzureリージョンに接続するために使用されます。2番目の拡張設計のEquinix Fabricは、同じく2番目のExpressRoute PoPを使用しますが、今度は別のマーケットにあるPoPを経由して別のAzureリージョンに接続するために使用されます。

冗長なお客様ルーター、冗長なEquinix Fabricデュアルポート、異なるExpressRouteエッジからプライマリAzureリージョンへ

冗長なお客様ルーターと冗長なEquinix Fabric、異なるEquinix Fabricと異なるExpressRouteエッジから別のAzureリージョンへ

Equinix FabricAzure ExpressRouteを使用したフォールトトレラント設計の導入

Microsoftとエクイニクスには、長いコラボレーションの歴史があります。エクイニクスのAzure関連イニシアティブの目的は、回復性を多層構造にして、柔軟な相互接続オプションをお客様に提供することです。

Equinix Fabricは、この相互接続アーキテクチャの基盤を提供し、Microsoft Azureクラウドリソースに最高レベルのネットワーク回復性をもたらします。お客様は、冗長なAzure ExpressRoute拠点に対する多様な接続方法を利用して、優先度の高いAzureワークロードとアプリケーションの高可用性を実現します。

エクイニクスは、すべての企業や組織のお客様にとって、デジタルトランスフォーメーションとネットワーク最適化を推進するうえで欠かすことのできないパートナーです。エクイニクスのグローバルプラットフォームにより、企業や組織は重要なデジタルインフラストラクチャの選択、導入、オーケストレーションを簡素化できます。Equinix FabricNetwork EdgeEquinix Metal™などのPlatform Equinix製品では、新たな仮想化機能がエッジで活用されています。統合されたコア機能により、プロバイダとパートナーからなるエコシステムへのアクセスと統合は、直接かつ安全なプライベート相互接続を介して簡素化されます。

エクイニクスとMicrosoft Azureのコラボレーションについては、こちらをご覧ください。

エクイニクスとMicrosoftのハイブリッドクラウドソリューションに関するビデオをご覧いただけます。

また、Equinix Fabricを使用してAzureへの接続を設計する際のガイダンスをグローバルソリューションアーキテクトのチームからガイダンスを受けることもできます。

 

 

[i] エクイニクス協賛の、IDC ResearchによるInfoBrief、「クラウド — 企業のデジタルトランスフォーメーションに関する基礎知識」、2020年7月

[ii] Microsoft、Azure製品ドキュメント、「ExpressRouteを使用した高可用性のための設計」、2019年6月28日

[iii] Microsoft、Azureアーキテクチャ、「Microsoft Azure Well-Architected Framework」、2019年11月20日

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Brian Petit Senior Principal Solution Architect
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