ここ最近で、アジア太平洋地域の組織は、同地域を製造の中心地からテクノロジーとイノベーションの重要拠点へと変える方向に長足の進歩を遂げてきました。ビジネスと社会のあらゆるレベルでテクノロジーを統合する。それにより、接続性の進んだ効率的かつ合理的な業務を実現できるという発展的なメリットを見事に実証しています。これは、同地域におけるコロナ禍への初期対応で、組織がデジタルおよびモバイル技術を駆使して迅速に事業を転換できた重要な要因でした。
今日見られるようにイノベーションを継続的に受け入れ、新しい業務手法の採用をオープンに進める姿勢が、アジア太平洋地域の経済の成功には不可欠です。相互接続ソリューション、クラウド、ITインフラストラクチャ導入というトレンドは続いています。デジタルリーダーの間には、慎重な姿勢とコロナ禍での混乱にもかかわらず、グローバルな拡大計画を加速する動きすらあります。しかし、こうした経済情勢の背景にある状況が不安定な今、デジタルリーダーは、今後のビジネスに向けた戦略をどのように御しているのでしょうか。
ポストコロナ戦略に影響を与えるテクノロジーのトレンドを的確に理解するために、エクイニクスは毎年恒例の『テクノロジートレンドに関するグローバル調査(GTTS)』を実施し、アジア太平洋地域を含む世界各国で2,900人を超えるIT意思決定者の声を聞きました。今回の記事では、意欲的な拡張計画をサポートするためにデジタルテクノロジーへの大規模な投資が進んでいることを示唆する新たな調査結果をご紹介します。以下は、アジア太平洋地域の組織が今後もグローバル展開の計画に対して強気であるらしい理由とその事情に関して見えてきた結果です。
エクイニクス2022、テクノロジートレンドに関するグローバル調査
5G、IoT、そしてWeb3。現在注目されているこうしたテクノロジーのうち、グローバル企業が今、将来を見据えた戦略の一環として投資を計画しているのはどれか、お確かめください。
eBookをダウンロードあらゆる局面をカバーする拡張計画
最新のGTTSによると、アジア太平洋地域のITリーダーのうち、今後12か月間に事業拡大を計画しているという回答は82%に達しました。このデータで注目したいのは、世界全体のIT企業と比較して、アジア太平洋地域のITリーダーは、経済的な不安にそれほど影響されていないらしいことです。たとえば、EMEAで、今後12か月間に新しい市場への参入を計画している意思決定者は59%にすぎません。アジア太平洋地域のリーダーは、多地域より多くの機会を捉え、デジタルを成功に活かしているようです。
コロナ禍の影響が長期化していることもあって、アジア太平洋地域のリーダーの半数以上が、デジタルトランスフォーメーションを加速していると回答しました。コロナ禍の直接的な結果として、IT予算が増加したと認めているITリーダーの比率も63%にのぼります。これは、GTTSの対象となった他の地域すべてを大きく上回っており、変化するビジネスニーズに応じて瞬時に軸足を移せる強固なデジタルインフラストラクチャが必要であるという認識が広がっていることを如実に物語る結果です。各組織は現在、過去の経緯を振り返ったうえで、混迷に対して柔軟性と敏捷性を発揮できるテクノロジーの重要性を認識しています。
戦略と需要がIT支出増加の原因に
さらに詳しく見てみると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、テクノロジー支出に対する企業の考え方に変化が起こっています。アジア太平洋地域のリーダーのうち、キャリアに依存しないコロケーションに対する2021年の支出が前年比で増加したという回答は46%にのぼりました。しかし、さらに注目に値するのは、意思決定者の78%が、次年度も支出を維持する、あるいはさらに増やす可能性があると答えていることです。これは、コロケーションサービスに対する需要が引き続き拡大していることを示唆しています。アジア太平洋地域の企業が、さらに成長を目指してクラウドベースのサービスや最新テクノロジーを採用する割合が高いことが背景にあるのかもしれません。
コロケーションと並んで、インターコネクション(相互接続)に対する支出も増加傾向にあります。アジア太平洋地域の意思決定者では、全地域の中で最も高い増加率が見られ、回答者のうち68%が2020年と比べて2021年の支出を増やすと答えています。また、今後のインターコネクションへの支出戦略についても、この地域がトップです。コロケーションのトレンドと同様に、インターコネクションへの支出は今後も続くと見られ、支出は今年も同じだった、または増えたという回答が88%に達しました。
現在のハイパー接続経済の中で競争し、成長していくうえでインターコネクションの必要性がますます高まっているため、こうした戦略は優先する必要があります。アジアのITリーダーの多くは、すでにインターコネクションの必要性を認識しており、ネットワークの最適化が進む(40%)、デジタルトランスフォーメーションが加速する(40%)、接続の柔軟性が向上する(39%)という点を指摘しています。
ハイブリッドマルチクラウドモデルを展開して、ビジネスの将来性を見据える
多くの組織が、デジタル世界で生き残るためにいやおうなくクラウドの導入を迫られましたが、今では柔軟性をもたらすその利点を理解し、新しい成長の機会と業務の将来性を確保するために前向きな投資を続ける組織も現れています。それどころか、ITリーダーの75%は、さらに多くのビジネス機能をクラウドに移行する予定だと回答しているのです。
アジア太平洋地域のITリーダーの間では、ハイブリッドクラウドモデルが最も広く普及しており、42%がそのアプローチを優先していると回答しています。これは世界的にも最も高かった回答であり、この戦略を採用する企業が増えると予想される中で、ハイブリッドクラウドに対する意欲は高まる一方であることを示すものです。ハイブリッドクラウドほどではありませんが、マルチクラウドを利用するデジタルリーダーの割合も増えており、そのうちの83%はすでに2社以上のクラウドサービスプロバイダーを利用しています。
この2つの戦略が普及していることから、インフラストラクチャは今後もシームレスな運用環境をサポートし続けなければならないといえます。こうした知見からも、企業が分散型クラウドによって業務の将来性を確保しているという傾向は裏付けられます。プロバイダーが単一の場合、あるいはまったくない場合より機能性と柔軟性に富むからです。そこで、インターコネクションが活躍する可能性があります。複数のサイトや地域にまたがるシームレスで遅延の少ない接続性によってローカルのパフォーマンスを実現する、ハイブリッドおよびマルチクラウドサービスのメリットを最大限に活かすことができ、クラウドサービスの所在を問わないからです。
ITインフラストラクチャを再設計して新たなテクノロジーを支える
アジア太平洋地域のITリーダーがデジタルトランスフォーメーションを積極的に受け入れているという事実は、驚くに当たりません。既存のテクノロジーを活用してグローバルな成長を追求する。それだけでなく、ITリーダーは将来を見据えて、最新テクノロジーに対して大規模な投資を行っています。そこには、同地域における各国政府の支持もあります。政府は、デジタル経済を加速するために各国内で先進的なデジタル化計画を打ち出しているからです。たとえば、シンガポールの「Smart Nation Plan」やオーストラリアの「Digital Economy Strategy」は、将来的な繁栄に向けた新技術の活用を提案しています。
このような姿勢が、アジア太平洋地域で見られるデジタルブームを後押ししているものと考えられます。たとえば、同地域では5Gの普及率が高く、最高品質の5Gを利用でき、韓国のような成熟した市場では特にこれが顕著です。そのため、アジア太平洋地域のIT意思決定者にとって5Gは優先度が高くなっているようで、多くの人が人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の新技術を活用する戦略の重要な要因であると認識しています。
しかし、現在のインフラストラクチャは、新しいテクノロジーを十全に活用してそのメリットを活かせるまでに最適化されているとはいえません。これは、5Gの機能と、AIやIoTなど5Gによって強化されそうな新技術をサポートするためにITインフラの再設計が必要だと考えているリーダーが43%にのぼることからも伺えます。そうした再設計の必要性は、Web3やEverything-as-a-Service(XaaS)など、先進的なテクノロジーの導入を検討しているリーダーにとっても、同様です。
IT戦略で今後のビジネスの形を作る
アジア太平洋地域のITリーダーに共通しているテーマは、成長です。都市、地域、大陸などどんな規模でも、ITリーダーは今後のビジネスに対して貪欲であり、しかも楽観的です。ポストコロナの世界に向けて、GTTSで判明したトレンドが、アジア太平洋地域のデジタルリーダーの考え方や戦略についての貴重な知見をもたらし、各社のデジタルトランスフォーメーション戦略に役立てられることを願っています。
グローバルとローカルとを問わず、戦略の原動力についての詳しいガイダンスや情報が必要な場合は、エクイニクスの『テクノロジートレンドに関するグローバル調査』をご活用ください。