モビリティの未来を担う マルチアクセスエッジコンピュート

安全に、効率よく車両を繋ぐカギとなる
MEC(マルチアクセスエッジコンピュート)

Doron Hendel
モビリティの未来を担う マルチアクセスエッジコンピュート

モビリティ業界は急速に変化しています。昨年発表されたエクイニクス グローバルインターコネクションインデックス(GXI)vol.5では、自動車、運輸業界が、コロナ禍の影響を受けてデジタルインフラストラクチャを急成長させた業界のひとつとなっています。モビリティ業界に属している各企業がコロナ禍からの回復を目指してビジネスチャンスを模索する中、その多くはビジネス全体の在り方、そしてビジネスを支えるデジタルインフラストラクチャについて改めて考え直しています。

コロナ禍の影響を受けて、これまで長年にわたって様々な形で変化してきたモビリティ業界のトレンドが加速しました。顧客はイノベーションを求め、企業は顧客の期待に応えようと巨額の投資を行っています。2010年以降、約3,300億ドルがモビリティテクノロジーに投資されており、そのうちの800億ドル以上が2019年以降に投資されたものです。特に注目の投資ターゲットとなってきたのが自動運転車とスマートモビリティであり、合計額のおよそ3分の2にあたる2,060億ドルがこの分野で占めています。[1]

自動車業界はソフトウェアとデジタルインフラを用いた統合型サービスモデルに移行

ユーザーと車両、データをデジタルエッジでシームレスに相互接続し、コネクテッドカーエコシステムで成功するための新しい基盤インフラを構築する方法とは。

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Connectivity

新テクノロジーとはスマートモビリティの新しい可能性である

自動運転車やスマートモビリティに高い関心が集まる主な理由のひとつに、新テクノロジーが完成に近づいており、刺激的な新しい可能性が生まれつつあるということが挙げられます。例えば、次世代5Gモバイルネットワークの登場は、スマートモビリティが必要とするローレイテンシ(低遅延)の実現を強力にサポートします。しかし、スマートモビリティの主流となるためには、5Gだけでは不十分です。

マルチアクセスエッジコンピュート(MEC)を備えてこそ、モビリティの未来を拓くことができるのです。エッジコンピューティングに対するこの新しいアプローチを用いると、自動運転車をデジタル環境に接続させ、ほぼリアルタイムでデジタルトランザクションを実行することができます。

近接度による限界を克服する

スマートモビリティを実現するには、デジタル環境に接続した車両が、常に周囲の状況を完全に把握していなくてはなりません。つまり、センサーなどのリソースからデータを引き出し、処理し、ほぼリアルタイムでそのデータに反応できなければならないのです。通信による遅延は許されません。

これまではまさに時間と空間が障害となって、スマートモビリティが本当の意味で普及しませんでした。一部の自動運転ユースケースに対するレイテンシの上限は非常に低いため、データの転送距離による遅延の増加に大きく影響を受けます。データが光速で移動したとしても、エンドポイントから数百キロも離れたクラウドサービスを使いながらレイテンシを低く保つことは、物理的に不可能となるでしょう。レイテンシを極めて低く保つには、車両またはトランザクションを発生ポイントとなるセンサーの至近距離にエッジノードがなければなりません。車内センサーを追加して安全性を追求する、遅れることなく接続車両に最新情報を提供するなど、MECユースケースを裏付けるためには、この低いレイテンシが必要です。

自動車業界向けMEC(MEC4Auto)は特に、車内システムの増加やレイテンシの軽減に関する車同士・路車間通信(V2X)を可能にするために設計されました。自動車OEMが提供する車同士(V2V)の接続に基づいて構築することができ、様々なサービスプロバイダ、ネットワーク、その他の補完的テクノロジーをシームレスに統合することができます。

新しいスマートモビリティユースケースが全般的により良い結果を牽引

ここでは、MEC4Autoによって可能となったスマートモビリティ ユースケースの複数例を簡単に見ていきます。しかし、私たち自身が無限の想像力を持ちさえすれば、スマートモビリティ ユースケースの可能性は無限大です。MEC4Auto、5G、その他の関連テクノロジーが引き続き成熟していき、普及率が高まっていく中で、今まで考えもしなかったユースケースが新たに生まれています。

リアルタイムの認知で交通弱者の安全を維持

歩行者や自転車は、車との接触で大きな被害を受ける交通弱者です。デジタル環境に接続している車両は、MEC4Autoテクノロジーを使ってリアルタイムで交通弱者の状況や位置を把握することができ、そのような情報を使って交通弱者の安全を確保することができます。

以下の図では、MEC4Autoがブリッジとなって、車両とその周辺にあるセンサーを繋いでいる状態を示しています。MEC4Autoのアーキテクチャは様々なネットワークに拡がる複数のデバイスからデータを取得し、エッジノードを使ってミリ秒単位で処理し、デジタル環境に接続する車両に送り返して、リアルタイムの認知と可視性を実現します。

MEC4Autoは、システム / ネットワーク / ユーザー間の独立した中継役として機能し、交通弱者ユースケースをサポートします。安全性を高めて既存の車内システムの増加に対応し、デジタル環境全体のメッセージを統合するメカニズムを提供します。

人間主導型の運転と自動運転車とのギャップを埋める

完全自動運転車を活用して安全性を高め、渋滞を軽減し、効率を高めることが、スマートモビリティが掲げる将来的な主要目標です。しかし自動運転車のテクノロジーは、まだ幅広く普及するほど成熟していません。遠隔操作運転が、人間主導型の運転と自動運転との中間に位置する重要なステップであり、今すぐに展開することが可能です。

遠隔操作運転は、オペレーターが車両を遠隔でコントロールすることで実現されます。人間が運転する従来のトラックと自動運転トラックが、同じ道路を安全に走行できるようにするなど、規制上の目的で活用できるものです。さらに、先進運転支援システム(ADAS)が作動しない場合や、何らかの理由によって自動運転車が常軌を逸脱してしまう場合にも、遠隔操作運転を行うことができます。その他のあらゆるスマートモビリティ ユースケースと同じく遠隔操作運転にも、堅牢なエッジコンピューティングインフラストラクチャを備えることにより可能となる、リアルタイムに近いトランザクション処理が必要です。

エクイニクスはMEC4Autoのサポートに必要なインフラストラクチャや環境を提供

「The world’s digital infrastructure company™ – 世界のデジタルインフラストラクチャ企業」であるエクイニクスは、スマートモビリティ向けMECによって生み出されたチャンスを利益に変えていただけるよう、他にはないポジショニングを活かして企業やサービスプロバイダの皆さまをお手伝いいたします。デジタルリーダーの皆さまは、Platform Equinix®を用いて、全世界の67もの市場で展開する230以上のデータセンターにアクセスできます。これによってデジタル環境に接続する車両が生み出す膨大な数のデータを管理しやすくなり、一番必要な場所でエッジインフラストラクチャを展開できます。

複数の情報源から得たデータへのアクセスが必要となるMECユースケースには、1,800以上のネットワークサービスプロバイダと、3,000ものクラウド・ITサービスプロバイダから成るパートナーエコシステムを備えたエクイニクスがご支援できます。ソフトウェア定義型のインターコネクションを活用したEquinix Fabric™をお使いいただくと、スマートモビリティ環境の中で、あらゆるパートナーへの依存性を持たない形でデータを共有し、トランザクションを実行しながら、プラットフォームやパートナーと接続する中立的な独立した立場を取ることができます。

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エクイニクスのコネクテッドカーに関するウェブページで、当社がコネクテッドカーのデータを効率的に管理し、価値を引き出す方法について詳しくご紹介しています。

[1] McKinsey & Company, “Mobility’s future: An investment reality check”. Authors: Daniel Holland-Letz, Matthias Kässer, Benedikt Kloss, and Thibaut Müller. April 14, 2021.

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Doron Hendel Former Global Business Development
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