クラウド隣接が可能にする4つのデータモーションパターン

適切なインフラを導入することで、柔軟なデータ移行が可能になり、ハイブリッドマルチクラウドを成功に導きます

Ian Botbyl
Glenn Dekhayser
クラウド隣接が可能にする4つのデータモーションパターン

クラウドの黎明期、多くの企業がすべてのアプリケーションとデータを1つのパブリッククラウドプロバイダが運用するクラウドに移行しました。これこそ、クラウドの俊敏性と拡張性を活用する最短の方法と考えたからです。しかし、時代とともに扱うデータ量が増大し、すべてのニーズに対して1つのプロバイダが運営するクラウドにロックインされることは望ましくなくなってきました。さらに、企業はコスト効率や柔軟性、最善のサービスの組み合わせを見出すため、クラウドにとらわれないアプローチを必要とし、ハイブリッドマルチクラウド戦略を追求し始めました。

エクイニクスでは、クラウド隣接デジタルインフラストラクチャが、最も斬新なハイブリッドマルチクラウドへのアプローチを可能にする、新しいオンプレミスコンポーネントと考えています。そして、このインフラの核を成すのが、信頼できるデータコアなのです。

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信頼できるデータコアとは、なぜ企業はそれを必要とするのか

長年にわたって成功を収めているデータドリブン型企業は、データを集約し分析することで潜在的ニーズを引き出し、そこからビジネス価値を生み出しています。つい最近までは巨大で単一なアプリを利用し、非常に限られた場所でのみ実行されていたので、従来のデータ構造でよく見かけるデータのサイロ化は、特に何の問題にもなりませんでした。

しかし、ビジネスがグローバル化したことで、データ量が肥大化し、レイテンシの要件が厳しくなるにつれ、従来の方法では対応できなくなってきました。世界中のさまざまな場所に分散したデータを集約し、同時に中核となる場所にデータセットのコピーを保持する新しいアプローチが求められるようになりました。

この集約拠点を、われわれは「信頼できるデータコア」と呼んでおり、企業がハイブリッドマルチクラウドで実行する可能性のあるすべての基盤です。ここには、データレイクや記録システム、バックアップされたセカンダリコピーなど、さまざまな形式のデータが集約されています。また、この信頼できるデータコアは1つの巨大なデータストレージのサイロではなく、ビジネス要件による戦略的配置、相互接続された一連のクラウド隣接領域となっています。

アップストリームとダウンストリームのレイヤはクラウドとエッジにわたり効果的なデータ移動を可能にします

信頼できるデータコアを取り巻くのは、アップストリームとダウンストリームの2レイヤです。これらのレイヤは、それぞれ相互接続性を有し、信頼できるデータコアからコピーしたデータを必要な場所に移動させる役割を担っています。ダウンストリームレイヤでは、都市圏のエッジロケーションとの相互接続性を指し、そこから世界中の遠隔にあるエッジロケーションへと相互接続します。

アップストリームレイヤは、信頼できるデータコアとさまざまなクラウドプロバイダとの相互接続性を確立させます。われわれは、お客様のクラウド隣接インフラの構築と運用を実施してきた経験から、アップストリームレイヤで発生する4つのデータモーションパターンを特定しています。

  1. クラウド隣接としての活用
  2. クラウド利用のみ(エグレスコストの削除)
  3. キャッシュとしての利用
  4. バックアップと復元

以下の図では、実際にエクイニクスで展開された時の信頼できるコアのダイアグラム、さらにはクラウドプロバイダに接続するアップストリームレイヤと、デジタルエッジに接続するダウンストリームレイヤを併せて表示しています。

ハイブリッドマルチクラウドのユースケースにおける4つのデータモーションパターン

この4つのデータモーションパターンは、最も基礎的レベルでハイブリッドマルチクラウドを作り上げています。これらのうちいずれか1パターンでも利用していない場合は、予想もしなかったような場所でデータの肥大化を招き、残念な結果を招く恐れがあります。

これらのパターンは、企業がハイブリッドマルチクラウドを「どう」運用するかだけでなく、「なぜ」運用するかまで示しており、データを特定のクラウドプロバイダにロックインさせることなく、オンデマンドでサービスを利用することでデータを自由に移動できることも意味しています。

1. クラウド隣接としての活用

クラウド隣接データとは多くの場合、このデータモーションのことを指し、信頼できるコアにデータを残したまま、クラウドから計算処理などのサービスにデータを提供するものです。多くの最新アプリが要求する低レイテンシを実現できるため、さまざまなユースケースに役立つとしています。

ただし、アプリによっては、隣接だけでは必要なレイテンシやスループットを実現できない場合もあるので、企業は他のデータモーションを適用したり、信頼できるコアのローカルコンピューティングを利用したりすることができます。

具体的には、データセンター拡張を利用して、ビジネスの成果を生み出すコンピュートクラウドの近くにワークロードの配置ができます。これは、従来のプライベートデータセンターを、エッジやクラウド、オンプレミス各拠点で稼働するワークロードに対してセキュアなコスト効率の高いデータアクセスを提供する、一元化したストレージ環境に置き換えることで可能となります。

2. クラウド利用のみ(エグレスコストの削除)

コピーしたデータをクラウドに移動して必要な計算処理を行い、新しいデータが信頼できるデータコアに入るたびにコピーを更新、不要になったらコピーを削除することで、企業は高いエグレスコストを支払うことなく、クラウド機能をフル活用できます。

つまり、データをクラウドからコアに戻す必要がないので、企業がクラウドプロバイダから離脱したり、他の場所でデータを使用したりするといった経済的な阻害要因がありません。こうした方法により、さまざまなユースケースに対応できる「ベストオブブリードな」(最善な)クラウドプロバイダと連携する柔軟性が確保できます。

「プロジェクトと削除」が特に有効なユースケースの1例として、AIモデルのトレーニングとその推論が挙げられます。AIは多くの反復的なプロセスから成り立っており、要求された回答精度を維持するためには、大規模なデータセットを駆使して、何度もモデルをトレーニングし直す必要があります。そのため、企業はデータセットをクラウドに移行させることで、コアに戻すための高いコストを心配せずにメリットを享受できます。

3. キャッシュとしての利用

キャッシングは、基本的に上記2つのパターンの中間に位置するもので、このケースではデータセットのフルマウント可能なリプリゼンテーションを別の場所(ここではクラウド)に作成します。「プロジェクトと削除」とは異なり、キャッシングは1回限りのコピーを特定の処理タスクに向けて作成するのではなく、半永久的なリアルタイムのコピー作成を目的としています。

キャッシュの潜在的な欠点は、信頼できるコアのデータを変更すると、キャッシュされたコピーが無効になってしまうことなので、企業はキャッシュのリフレッシュやリードスルー操作を都度実行する必要があります。

キャッシュされたデータセットの永続性は、ミッションクリティカルでステートフルなアプリをサポートする上で理想的です。こうしたアプリは、参照データやマスターデータを含むデータベースに対して低レイテンシで接続可能です。クラウド隣接で実行することで、レガシーのデータ構成よりも最大で20倍速くデータを処理できます。

4. バックアップと復元

パブリッククラウドで作成されたプロダクション用のデータセットがある場合、「バックアップと復元」によって、データのコピーを信頼できるコアに作成できます。バックアップが作成されると、データ保護の目的で元のデータセットを復元するために使用したり、さまざまなクラウドやサービスでの使用のために複製したりすることができます。

企業は「バックアップと復元」を利用して、仮想クラウドに隣接した災害復旧サイトを構築できます。このサイトは、従来の物理的な災害復旧リサイトよりも設定が迅速でコスト効率が高く、バックアップとデータ転送速度 を最大で10倍速くできます。重複排除技術と組み合わせれば、パブリッククラウドのエグレスコストをほぼ回避できます。

クラウド隣接型インフラで4つのデータモーションパターンの性能を解放

上記4つのデータモーションは、ハイブリッドマルチクラウド展開時の中核を成すものなので、信頼できるデータコアそのものとアップストリーム、ダウンストリームのレイヤを構成するインターコネクション(相互接続)機能、グローバルクラウドオンランプ可用性、エッジユースケースをサポートする分散インフラを含め、これらこれらのデータモーションをサポートする基盤としてのクラウド隣接インフラの整備が重要になります。グローバルなデジタルインフラ企業(the world’s digital infrastructure company™)であるエクイニクスは、世界最多のマルチクラウド対応拠点として、これらそれぞれのコンポーネントをサポートできる唯一のパートナーです。

ハイブリッドマルチクラウドを成功せるためのクラウド隣接型データモーションパターンなど、エクイニクスによるエッジからクラウドへの完全なアプローチを実現する方法については、「リーダー向けデジタルインフラストラクチャガイド」をご覧ください

 

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Ian Botbyl Former Senior Manager, Product Marketing
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Glenn Dekhayser Global Principal, Global Solutions Architects
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