量子コンピューティング+コロケーション+インターコネクション=デジタルトランスフォーメーション

OQC (Oxford Quantum Circuits)の量子コンピューティングを都内のエクイニクスデータセンターTY11に導入
グローバルに向けたビジネス展開を始動

Arun Dev
Ilana Wisby
量子コンピューティング+コロケーション+インターコネクション=デジタルトランスフォーメーション

量子コンピューティングという、従来の技術とは異なる新技術に関し、今、多くの期待が集まっています。また、技術の成熟、社会での採用状況や浸透度も徐々に進んでいると言えるでしょう。

注目や機体が集まる理由の一つとしては、従来のコンピュータがバイナリ状態 (0 または 1 で表される) に依存している一方、量子コンピュータは0 と 1 の両方を同時に表すことができ、例えば、最高性能のスーパーコンピュータでさえ何千何万もの年数を要するような高度で複雑な演算を、量子コンピュータを使えば、数分単位で回答が得られるという利点が明らかになってきているからです。

Equinix Fabric™は、Platform Equinix 上の企業インフラストラクチャに自社の分散型インフラストラクチャを接続できるようにするソフトウェア定義の相互接続サービスです

ハイブリッドでの展開を実現、ネットワークの俊敏性とパートナーやプロバイダに簡単かつ安全に直接接続します。

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Equinix Fabric™ Data Sheet

業界アナリストはこれまで長年にわたり、量子コンピューティングが持つ可能性について議論してきていました。それらを踏まえ、今、ビジネスリーダー達は、量子コンピューティングとは何かを十分に理解するとともに、量子コンピューティングではできないことを明確にしながら、量子コンピューティングの利用を検討しています。

まず、量子コンピュータは現在私たちが使っている従来型のコンピュータの代替にはならないことを理解しなくてはいけません。ユーザが量子コンピューティングの恩恵を受けられるようになるには、既存ITインフラストラクチャとの統合が必要とされ、それにより、ユーザは量子コンピューティングとITインフラの恩恵を受けることができるものだと考えています。

現在の量子コンピュータは多くの企業にとって、自社で構築するには高額すぎる上、自社で管理するにも複雑すぎるため、採用が難しくなっているという実務的側面もあります。

そのような環境下、Oxford Quantum Circuits(OQC)など「Quantum Computing as a Service(サービスとしての量子コンピューティング[QCaaS])」を提供する企業が登場し、量子コンピューティングの商用利用への参入障壁を下げようとしています。これらの企業は、パブリッククラウド経由でQCaaSを提供することで[1]、他のクラウドサービスと同様に量子コンピューティングを利用しやすくしようとしています。

一方、パブリッククラウド上のアプローチが量子コンピューティングを利用する全ての場合に適しているとは限りません。企業がより柔軟性のある選択肢ができるよう、OQCとエクイニクスは連携し、量子コンピューティングをコロケーションとPlatform Equinix®の相互接続サービスを通して利用できるように取り組んでいます。2023年3月エクイニクスのIBX®東京データセンターの1つであるTY11にOQCの量子コンピューティングが導入されましたが、これが2023年秋に稼働を開始すると、世界中のエクイニクスのお客様に対してQCaaSが提供される第一歩となります。

Image showing a quantum computer from Oxford Quantum Circuits

ベンダに縛られないコロケーション データセンターを介してQCaaSを提供することのメリットは、大きく4つあります。

  • アクセスと統合の容易性向上
  • データセキュリティおよびデータ主権の管理強化
  • パフォーマンスのボトルネックを解消する低レイテンシ
  • 革新的なサステナビリティ対応

アクセスと統合の容易性向上

企業が量子コンピューティングを使い始める際に直面する最大の課題の1つは、既存のデジタルインフラストラクチャとの統合です。前述したように、量子コンピュータは既存のシステムと置き換えられるものではなく、補完するものです。一方、本質的に異なる2つの形式のコンピューティングを、1つの統合された動作環境内で組み合わせることの複雑さは、ほとんどの組織の技術的能力をはるかに超えているのです。

エクイニクスのIBXデータセンター内にOQCのQCaaSを導入することにより、量子コンピューティングの複雑さを取り除く抽象化レイヤが作成されます。これにより、お客様は、ボタン1つで量子コンピューティングを利用できるようになり、エクイニクスから提供されている他のサービスを使う場合と同様、簡単に管理できるようになります。量子コンピュータが自社のオンプレミスインフラストラクチャ内で稼働している場合と全く同じように、量子コンピューティングサービスを自由に制御しながら利用できるようになるのです。

また、お客様は、エクイニクスのパートナーやサービスプロバイダの堅牢なデジタルエコシステムと、Platform Equinix上の分散型エッジインフラストラクチャを最大限に活用できるようになります。つまり、量子コンピューティングを使い始める際の複雑性を回避しながら、すべての恩恵を受けられるようになるのです。

データセキュリティおよびデータ主権の管理強化

量子コンピューティングの採用に際し、現時点ではどの組織もまだ実験段階で、現在、量子コンピューティングシステム上に移行しているデータは、基本的にテストデータあるいはダミーデータです。実際に利用する段階が近づいた時点では、量子コンピューティングを利用するうえでの安全性が特に重要になってきます。

それは、金融サービス業界のポートフォリオの最適化やリスクマネジメントなど、量子コンピューティングを使うことにより、効果が発揮されるだろうケースの多くが、非常に機密性の高いデータセットの使用を必要とするためです。ほとんどの企業は、常に安全性を担保できないため、機密データをパブリック クラウド上などに置くことを望んでいません。

OQCのサービスの活用を検討しているお客様、複数の異なる法域でますます厳しくなるデータ主権に関する基準を遵守できるかを懸念している大規模法人のお客様に対して、機密データを危険にさらすことなく量子コンピューティングサービスで活用できるようにするのが、Equinix Fabric®です。Equinix Fabricは、ソフトウェア定義された相互接続機能を提供し、世界中で利用可能です。これをつかうことにより、データの制御を放棄し、Platform Equinix®から移動することなく、システムが物理的に配置されている場所から OQC コンピュータへのデータ移動が可能になります。

パフォーマンスのボトルネックを解消する低レイテンシ

レイテンシがデータ移行における遅延などを引き起こすことがあります。製薬業界で新薬を開発する例を見てみましょう。これは、OQC が取り組んでいる非常に有望なユースケースです。なぜなら、製薬開発は本質的に一連の試行錯誤の実験だからです。複雑な分子反応をシミュレートすることで、製薬会社は製剤をコスト効率よく特定できるようになるからです。ただし、このユースケース全体は、大量のデータを遅延なく取り込める量子コンピュータに依存しているため、レイテンシが原因でパフォーマンスのボトルネックが発生すると、量子コンピューティングのメリットを享受できなくなる可能性があるのです。

ここでも再び、Equinix Fabricを介した相互接続が問題の解決に役立ちます。最近の技術ベンチマーク[2]では、Equinix Fabricが公衆インターネットと比較して、最大で28倍のパフォーマンスを提供できることが確認されており、これにより、企業は物理的な距離によって生じるレイテンシの影響を相殺できるようになります。Equinix Fabricは全世界で利用可能なため、エクイニクスのお客様は、レイテンシを重要視するために東京にデータを配置する必要はありません。さらに、Equinix Fabricがオンデマンドに利用できることで、企業は、必要に応じて容易に接続を起動または停止、帯域幅や速度を容易に変更できます。

革新的なサステナビリティ対応

企業は、量子の能力を最大限に活用する方法を考えると同時に、運用をより持続可能にする方法も検討しています。デジタルインフラストラクチャを最適化することで、サプライチェーン全体でCO2の排出量を制限しようとしているのです。量子がサステナブルな取り組みにどのように影響するかについて懸念を抱いている企業も多いのは事実です。量子は特定の使い方においては膨大な威力を発揮するため、実行するには論理的により多くのエネルギーが必要であろうと多くの人が考えているのです。

新しい量子コンピュータをオンライン接続するために電力量を必要とすることは事実ですが、プロセスの規模を長期的に拡大することでエネルギー効率が高まり、機器の冷却に必要な電力の相殺にとどまらない省エネが可能となります。お客様は、エクイニクスのIBXデータセンターにあるOQCのQCaaSを利用することにより、直ちにこうした効率の高さを活用できます。量子プロセッサが高度になるにつれて複合化し、企業は同じ電力量でより多くのことを達成できます。

また、量子コンピューティングは多くのサステナビリティに貢献する使い方も提供します。その一例が、グリーン水素の生産における触媒使用量を最適化するためのパルス電気分解のエネルギー状態のモデリングです。量子コンピューティングによって、電気分解のプロセスの効率を著しく高めることで、グリーン水素のコストを35%低減できる可能性があります。これは、グリーン水素を化石燃料の実用可能な代替物として広めるための重要な一歩となります。

Image showing a close-up view of a quantum computer from Oxford Quantum Circuits

さらに、お客様は、エクイニクスのIBXデータセンター内でOQCのQCaaSにアクセスすることで、エクイニクスとそのパートナーによって開発されたサステナブルな環境が活用できます。エクイニクスはデータセンター業界で初めて、2030年までにクライメイトニュートラル(気候中立)になると約束した企業です。この目標を達成するため、科学的根拠に基づく目標(SBT)を定め[3]グローバルな事業全体でCO2の排出量を削減しています。また、全世界で再生可能エネルギー利用率95%を既に達成し、目標としている利用率100%の達成に向けて取り組んでいます。TY11を含む世界中の200を超えるIBXデータセンターで、既に再生可能エネルギー利用率は100%に達しています。

エクイニクスとOQCは、それぞれのデジタルサプライチェーン全体でCO2の排出量を削減するという共通の約束を掲げており、このこともまた、互いにパートナーとなるための足並みが十分に揃っている理由の1つとなっています。共通のお客様が量子コンピューティングの潜在的な持続可能性の利点を最適化するのを支援しながら、共通のサステナビリティの目標追求を互いに支え合うことを楽しみにしています。

適切なデータの適切な場所への配置を助ける相互接続

エクイニクスとOQCのパートナーシップは、Equinix Fabricのソフトウェア定義された相互接続が、より多くの組織に、より多くの場所で高度なデジタルユースケースを可能にしている、もう1つの例だと言えます。Equinix Fabricのセキュリティやパフォーマンス面での強みについて、また、世界中の多くのパートナー、サービスプロバイダ、そしてお客様とのシームレスなインターコネクション(相互接続)について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのガイドをお読みください

Oxford Quantum Circuits(OQC)の詳細については、CEOのIlana Wisby博士のインタビューを御覧ください。

[1]Amazon Braket

[2]Craig Ledo, “Measuring Performance with Equinix Fabric versus Public Internet”(エクイニクスが委託したESGの専門的検証に関するレポート、2022年9月発表)

[3]科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)

 

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#量子コンピューティング #量子 #OQC     #Quantum Computing as a Service

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Arun Dev Vice President, Digital Interconnection Services
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Ilana Wisby Guest Author: Chief Executive Officer, Oxford Quantum Circuits
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