複数のクラウドプロバイダ、環境、プラットフォームを円滑に連携させるのは非常に困難です。統一されていないモニタリングやログ手法、各サイロからのデータ統合・相関、さらには異なる設定の管理など、解決すべき課題が山積しています。加えて、低遅延・高パフォーマンスの実現とコストの最適化、そして環境全体での一貫したセキュリティとコンプライアンスの維持が求められます。しかし、適切なツール活用に重点を置いた入念な戦略により、これらの課題は十分に克服可能です。
サードパーティ製のモニタリングおよび可視化(オブザバビリティ)ツールは、環境内の複雑な機能や挙動に対する深い洞察を提供します。また、包括的なオブザーバビリティツールは、ハイブリッドマルチクラウドシステムの可視性に関する一般的な課題の解決に大いに寄与します。
以下に、そのような5つのツールを紹介します。
- Dynatrace
- Grafana
- Datadog
- New Relic
- Splunk
監視および可視化ツールの選び方
ハイブリッドマルチクラウド環境を採用している企業や組織にとって、可視化ツールは複数のクラウドプロバイダ、オンプレミス環境、そして多様な技術スタックからデータを収集・統合・拡張するために不可欠です。そのため、OpenTelemetryやPrometheusなどのオープンソースフレームワークやツールキットとの統合も重要な要素となります。
優れたツールは、リアルタイムの脅威インテリジェンスに基づいた動的な適応型監視を実現し、脅威の迅速な特定と対応時間の短縮を自動化します。さらに、最新の可視化ツールやプラットフォームは、AIや機械学習(ML)の技術を取り入れることで、システムのパフォーマンスや挙動をより深く分析し、迅速な対応を可能にしています。
ツールを評価する際には、高度な分析機能や可視化機能が重要なポイントとなります。AI/MLを活用した異常検知、リアルタイムアラート、予測分析などの機能により、積極的な問題対応が可能となり、ダウンタイムの削減に寄与します。万が一インシデントが発生した場合も、根本原因分析(RCA)を用いて問題の要因を迅速に特定できます。また、直感的に操作できるユーザーインターフェースやカスタマイズ可能なダッシュボードが統合され、必要なメトリクス、ログ、可視化情報へ容易にアクセスでき、さらに設定、デプロイ、運用管理がシンプルであることが理想です。
以下、それぞれのツールについて詳しく解説していきます。
Dynatrace
Dynatraceは、開発者、運用担当者、DevOps、ビジネスチームなど、企業や組織内の多様なチームが中央のIT部門に依存せずとも監視データを活用できるよう設計されています。これにより、各チームの自律性や効率性が向上し、カスタマイズ性と拡張性も促進されます。
主な特徴は以下の通りです。
- 環境に応じ、設定の複雑さが変動する
- カスタマイズ性の高いUIとダッシュボードにより、ワークフローに最適化可能である
- アプリケーション、インフラストラクチャ、ユーザーエクスペリエンスを含む技術スタック全体をエンドツーエンドで可視化する
- 715以上の技術やクラウドサービスと統合可能である
- AIエンジンを活用したリアルタイムのデータ収集および分析が可能である
- 脅威の早期発見と保護をサポートする多彩なセキュリティ機能を搭載している
Grafana
Grafanaは、強力なオープンソースの可視化ツールを求める方に最適な選択肢です。クローズドソースの類似ツールと比較して、より柔軟な統合およびカスタマイズが可能であり、基本的にはフォーク(元のプロジェクトからソースコードを複製し、それを基に独自の機能追加や修正を行う)して独自のバージョン(例:Plutono)を作成することもできます。このオープンソース性が、IT、金融、ヘルスケア、製造など、さまざまな業界で広く採用される理由の一つとなっています。
主な特徴は以下の通りです。
- ホスティング環境と実行場所の自由選択が可能であるが、自前での設定および運用に時間を要する
- カスタマイズ可能なダッシュボードの作成が可能である
- 組み込みのAI機能により、タスクの自動化、異常検知の高速化、コストおよび工数の最適化を実現する
- 多様なプラグインおよび拡張機能をサポートしている
- データに基づいたアラート設定により、リアルタイムイベントの通知を受信可能である
- ロールベースのアクセス制御、多要素認証、DDoS攻撃対策といったセキュリティ機能を搭載している
Datadog
Datadogは、ハイブリッドマルチクラウド環境が一般化する以前から実績を積み重ねてきた、信頼性の高い監視および可視化ツールです。2010年に設立された会社とプラットフォームは、現在、450以上のテクノロジーと包括的に統合され、AIによる先進的な洞察やその他多数の機能を提供しています。
主な特徴は以下の通りです。
- 標準的な展開および設定プロセスが整備され、KubernetesやHelmでの導入が可能である
- 各統合機能には事前厚生済のダッシュボードが提供され、カスタマイズや新規作成が可能である
- すぐに利用可能なオープンソースのエージェントが採用され、Pythonを用いたカスタマイズが可能である
- AIを活用した機能により、可視性が強化され、インシデント管理が効率化できる
- 柔軟かつ強力なリアルタイムモニタリングにより、既存プラットフォーム上の重要データに対するアラート設定が可能である
- Datadog アプリケーション監視(APM)を活用したアプリケーションレベルの攻撃検知、インアプリ検出ルール、クラウドインフラストラクチャ全体のセキュリティ管理機能が搭載されている
New Relic
2007年に誕生したNew Relicは、当初、アプリケーションパフォーマンスの監視を主目的としていましたが、現在ではアプリケーションパフォーマンスに関する洞察を提供し、モバイル、ブラウザ、および総合的なパフォーマンスの監視を行うための包括的なツールを備えた、可視化および監視のプラットフォームとなっています。
主な特徴は以下の通りです。
- インフラストラクチャおよびAPMエージェントを含む「無料プラン(Free Forever)」の提供
- WebクライアントのUIの多機能性に伴う煩雑さをカスタマイズによりUXの向上が可能
- カスタマイズ可能なダッシュボードの提供と、独自のビジュアライゼーションの設定
- オープンソースのインフラストラクチャエージェントの採用と、コミュニティ主導の開発・革新の推進
- 生成AIおよび自然言語クエリ(NLQ)機能の搭載による、迅速な問題特定と解決のサポート
- UXトラッキング機能とリアルタイムログ分析を備えた、継続的なリアルタイム監視の提供
- 自動的な根本原因分析のAIOps機能とアラート機能
- 業界標準の暗号化プロトコル、SAML、SSO、RBAC機能の搭載と、プライバシーバイデザインの原則に基づいたデータ保護法への準拠
Splunk
Splunkは、このリストの中で最も歴史あるツールで、2003年に設立されました。現在はCiscoグループに属しており、機械生成データをリアルタイムで検索、監視、分析することを目的としています。データから有益なインサイトを導き出すことで、セキュリティ、可視性、運用効率の向上を支援しています。
Splunkの主な特徴は以下の通りです。
- 他のツールと異なり、導入前の要件明確化および適切なバージョン選択の必要性
- 設定およびデプロイメントの高度なカスタマイズ性と詳細な管理を求める管理者への適合性
- 独自の検索処理言語によりクエリを実行する高度なリレーショナルデータベースと類似した機能
- 標準テンプレートはなく、ダッシュボードのゼロからの構築が必要
- 分析ワークスペースにおけるデータポイントおよびインデックス設定後のインタラクティブなデータ分析
- インフラストラクチャ監視、APM、リアルユーザー監視、統合監視を含む各種監視機能の提供
- 統合型脅威検知、調査、対応ワークフローおよび業界標準暗号化プロトコルを含むセキュリティ機能
マルチクラウド監視の課題解決
インフラストラクチャ全体の包括的な監視や大量のデータの可視化・整理は、現代のIT管理、サイバーセキュリティ、DevOpsにおいて大きな課題の一つです。特にハイブリッドマルチクラウド環境においては、この課題が一層顕著ですが、幸いにも多くの選択肢が存在しています
とはいえ、企業や組織ごとにハイブリッドマルチクラウド環境の要件は異なるため、単一のツールですべてのニーズを満たすことは困難です。そのため、監視の目的や要件、プロジェクトの予算を明確にすることが重要です。その上で、目的を達成するために最適かつコスト効率の高いツール(または複数のツール)を選定するのがよいでしょう。
Equinix Fabric®は、ソフトウェア定義型の相互接続(SDI)ソリューションとして、接続されたサービスの可用性とパフォーマンスを確保するための監視および可視性機能を提供します。また、FabricのTerraform統合を活用することで、可視性(オブザバビリティ)サービスをInfrastructure as Code(IaC)として管理できます。
さらに、エクイニクスのデータセンターは中立的かつアクセスしやすいプラットフォームを提供し、可視化ツールをホスティングするのに適しています。これにより、ハイブリッドマルチクラウド環境全体の監視を一元的に収集できます。
マルチクラウドネットワークガイドをダウンロードし、企業や組織がマルチクラウド環境を設計する際に考慮すべき重要なポイントを詳しくご確認ください。