AIの時代が進むにつれ、エージェント型AIは急速に成熟しています。Gartner®によれば、エージェント型AIは2025年の主要テクノロジートレンドの筆頭に挙げられています。[1] AIエージェントはAI推論の能力と効率を飛躍的に高めており、HR、マーケティング、ファイナンス、ITなど、あらゆる業務ドメインで活用事例が拡大しています。たとえばIT分野では、複数プロバイダのエージェントが連携し情報を共有することで、エンタープライズ向けアプリケーションスタックがいっそう自律的かつ柔軟になります。
アクセンチュアによれば、AIエージェントは次の3つに大別されます。[2]
- ユーティリティエージェント:基本的なタスクを自動化し、非構造化データを収集や整理します。通常はSaaSベンダーが提供します。
- スーパーエージェント:ユーザーの意図と目標を理解し、複数のユーティリティエージェントを組み合わせてタスクを完遂します。業種汎用型と業界特化型があり、オープンソースやGSIなどソリューションプロバイダが提供します。
- オーケストレーターエージェント:パフォーマンス、可用性、回答品質、コストといったビジネス基準に基づいてスーパーエージェントにタスクを割り当てる、またはスーパーエージェントから呼び出されます。業界には、オーケストレーター実装を支援するさまざまなフレームワークが存在します。
適切なタイミングで正しいタイプのエージェントを展開することで、複雑なエージェント型AIワークフローの調和と効率を維持できます。
企業はコスト、パフォーマンス、精度、柔軟性、可用性、プライバシーなどの理由から、複数プロバイダの大規模言語モデル(LLM)を併用するケースが増えています。エージェント型AIを導入するには、クラウドやプライベートインフラストラクチャに分散したこれらのAIモデルとエンタープライズデータソースすべてへアクセスできることが欠かせません。これらの要件に対応できなければ、企業がビジネス課題を意味ある形で解決するのは難しいでしょう。
エージェント型AIでネットワーク運用を高度化する
ITの例として、ネットワーク運用(NetOps)チームがエージェント型AIを用いてネットワーク管理を合理化したいと考えているケースを見てみましょう。エンタープライズネットワークを円滑に稼働させることは、ビジネス継続に不可欠です。NetOpsチームはネットワークパフォーマンスの監視、障害対応、リソース更新、問題の特定と緩和を担当するため、多数のデータソースにアクセスする必要があります。これらの情報収集や整理には相当な時間がかかります。
エージェント型AIを用いれば、NetOpsチームははるかに短時間で回答を得て問題を緩和できます。ネットワークに問題が発生した場合、ネットワークエンジニアが自然言語でクエリを入力すると、AIソリューションが複数のシステムオブレコード/エンゲージメントからデータを迅速に集約し、解決策を提示します。類似のAIソリューションは、サポートエンジニアが分散システムにまたがるデータへアクセスしてお客様の課題を解決する他の業務領域にも応用できます。
まずチームはAIの取り組み要件を整理し、その要件を支える適切なアーキテクチャを設計する必要があります。本番導入へ進めるには、その取り組みがネットワーク運用をどのように改善しビジネスに利益をもたらすかを示すROIを明確に立証することが重要です。
エージェント型AI推論ソリューションの主な要件
エージェント型AIソリューションを展開する前に、ビジネス要件と技術要件を検討しなければなりません。機能要件はドメイン固有で「何を行うか」を定義し、非機能要件は「どのように行うか」を定義します。たとえばNetOpsの事例では、データ機密性、レイテンシ、コスト、可用性などが非機能面で重要な検討項目です。
図1:エージェント型AIソリューション検討事項
適切な質問を投げかけ、AIプロジェクトの要件を理解したら、それを支えるアーキテクチャを検討できます。NetOpsの例はマルチクラウドアーキテクチャに焦点を当てています。チームはゼロから新しいAIモデルを構築するのではなく、既存モデルを活用し、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)推論を使用してモデルを最適化し、ビジネスニーズに合わせて精度を高めています。
エージェント型AIを支える最適なアーキテクチャ
マルチクラウド/マルチモデル環境でエージェント型AIの要件に応えるには、ハイブリッドマルチクラウドAIアーキテクチャが必要です。パブリッククラウドだけ、あるいはオンプレミスだけでは、求められるデータとAIモデルを単一プロバイダから得ることはできません。
ハイブリッドマルチクラウドAIを採用すると、多様な場所にあるデータや複数のAIモデルへアクセスできます。これは、パブリック/プライベート双方のデータ、モデル、インフラストラクチャを活用する企業AIの将来像です。
NetOps例では、エンジニアがネットワーク問題を解決するために多数のデータソースへアクセスする必要があります。各システムオブレコード/エンゲージメントにはユーティリティエージェントが紐づき、スーパーエージェントがそれらを連結してサポート要求に対応します。最終的に、インテリジェントルーター(オーケストレーターエージェント)がクエリのデータ機密性、クエリコンテキストのサイズ、クラウド可用性、結果の精度、コストに基づいて、各クエリを適切なAIモデルへルーティングします。このルーターは、図1の基準を考慮するトレーニング済みの分類器を用いて、AIモデル、SaaSユーティリティエージェント、あるいはネットワーク機器のいずれへ送るかを判断します。本例では、オーケストレーターエージェントが予測可能な性能を備えたプライベート高速ネットワークであるEquinix Fabric®を介してSaaSユーティリティエージェントとクラウド上のAIモデルに接続します。
図2は、NetOpsチームのエージェント型AIアーキテクチャを示しています:
図2:オーケストレーターエージェントによるクエリルーティングを含むエージェント型AIアーキテクチャ
このようなハイブリッドアーキテクチャがAIに不可欠である理由は次のとおりです。
- 柔軟性:クラウドニュートラルなコロケーションデータセンターにデータ資産やベクターデータベースを置き、複数クラウドのコンピュートとAIモデルを柔軟に活用できます。NetOps の例では、プライベートインフラストラクチャでも AI モデルが実行されています。
- データプライバシー:知的財産を守るために非公開としたいデータセットは、プライベートAIインフラストラクチャで処理できます。
- 演算能力:自社インフラストラクチャのGPUが不足する大規模文脈の非機密クエリは、クラウドLLMで処理できます。
- コスト:クエリとデータを中央クラウドへバックホールすると高コストになるため、データ発生地点(エッジ)で処理するほうが有利です。
- 可用性:プライベートインフラストラクチャ上に主要な推論環境を置く場合でも、障害時のみ稼働するパブリッククラウドのバックアップを用意できます。
- リソースのバースト:基基盤はプライベート拠点に構築し、ピーク時だけクラウドへ拡張(バースト)する運用も可能です。
AI取り組みのROIを示す
ほとんどの企業がAIを活用してビジネス課題を解決したいと考えていますが、多くのAIソリューションはPoC止まりでなかなか本番に至りません。その理由のひとつは、ROIを意味のある形で示せないことです。エージェント型AIソリューションが自社にどのような利益をもたらすのか―たとえば従業員の作業時間を削減するのか、コストを削減するのか―を明確に示す必要があります。
NetOpsの例では、手動プロセスとAI検索とでネットワークエンジニアが各タスクに要する時間を比較することで、AIエージェントとインテリジェントルーターによって節約できるタスクや時間を簡単に可視化して比較できます。
図3:エージェント型AIの有無によるネットワークエンジニアの作業時間
AI エージェントとインテリジェントルーターを使用することで、ネットワークチームが節約できる時間は非常に大きいです。このエージェント型 AI ソリューションを使用することで、ネットワークエンジニアはネットワークの問題をより迅速に解決し、ネットワークの可用性を確保することができます。
ベンダーニュートラルプラットフォームで実現するマルチモデルのエージェント型AI
エージェント型AIは幅広いビジネス課題を解決する有望な技術です。そのハイブリッドマルチクラウドAIアーキテクチャを構築するには、SaaS、クラウド、ネットワークプロバイダ、業界エコシステムと高速かつ安全に接続できるベンダーニュートラルなプラットフォームが欠かせません。推論をエッジで実行するには、ユーザーやデータ生成源に近いデータセンターに拠点を置き、レイテンシを最小化しつつ規制順守を容易にすることが重要です。
エクイニクスは、大規模AI推論に十分な電力と冷却を提供するAI対応データセンターを世界30以上の国と地域で運営し、10,000社超の企業やサービスプロバイダを収容しています。また、業界最多のクラウドオンランプにより、主要クラウドへの低遅延と高速接続を実現しています。
AIソリューションをエクイニクスで展開するメリットの詳細は、当社のハイパフォーマンスデータセンターソリューション紹介ページ(英語)をご覧ください。
[1] Gartner, Gartner Top 10 Strategic Technology Trends for 2025, Gene Alvarez, 2024年10月21日.
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[2] Leveraging the Hive Mind: Harnessing the Power ofAIAgents, 2024年11月2日.


