AIの急速な進歩は、産業全体を変革しています。現代のビジネスが競争上の優位性を維持するためには、意思決定のスピード、運用のレジリエンス(回復力)、そしてパーソナライズされた体験が不可欠です。また、許容できるパフォーマンスレベルに対する消費者や企業の期待の変化に応える必要もあります。
これらの高まる基準を満たすためには、エッジにおける近接性に基づいたAIインフラストラクチャが不可欠です。AI活用の現状は、中央集権的な場所でのAIモデルのトレーニングから、エッジでのワークロード推論を含む、より分散化されたパラダイムへと進化しています。その一因は、低遅延に依存しエッジで意思決定を行う、エージェント型AI推論の台頭にあります。
新しいAIモデルはより専門性が高く小型化しており、エッジでのトレーニングを可能にしています。企業がこれらの特定領域に特化したモデルを利用するのは、特定の業界、機能、そして専有データセットでの使用により適しているためです。
これらすべての要因により、データが生成、保存、処理される場所と近接しているエッジは、より戦略的なコンピュート拠点となっています。
貴社のプライマリエッジはどこですか?
企業や組織は自社のエッジがどこにあるのかを再考する必要があります。実際、企業がAI推論の実行場所として選択しうるエッジは複数存在します。その中でもメトロエッジは、低遅延、データプライバシー、コスト効率の最適なバランスを提供するため、AI推論ワークロードにとって極めて重要な場所として注目を集めています。
メトロエッジを選択するということは、推論データを、データソースと同じ地理的に集中したエリア内にあるコロケーションデータセンターのような別の施設に移動させることを意味します。このアプローチは、推論ワークロードを単一の場所に集約し、通常10ミリ秒未満の遅延を実現するとともに、企業が自社施設内でプライベートインフラストラクチャを運用する必要性をなくします。
アプリケーションの種類も、許容できる遅延が異なるため、プライマリエッジの場所を特定する上で影響を与えます。機械向け(M2M)のアプリケーションは通常、高速かつ低遅延を必要とします。一方、対人向けアプリケーションでは、数ミリ秒の遅延が加わったとしても、気づくことさえないでしょう。放射線技師が医療記録を検索するのに即時の応答は必要ありませんが、歩行者を避けようとする自動運転車には必要です。
データがどこで生成・処理されるか、データソースにどのようにアクセスするかといった業界固有の要件も、企業のエッジの場所を決定します。企業は、さまざまなサービス機能においてエッジの遅延要件を満たす必要があるかもしれません。
- 物流企業: 荷物の追跡、配送ルートの管理、倉庫業務の合理化、貨物のセキュリティ監視と確保。
- コンテンツ配信企業: リアルタイムでカスタマイズされた推奨の提供、低遅延ストリーミング、タイムラグのないゲーム、没入感のあるAR/VR体験の保証。
- スマートシティ: 交通管理、犯罪検知、緊急対応のためのリアルタイム映像分析とセンサーデータ処理の活用。
- 医療機関: より迅速な診断と個別化治療のための継続的なモニタリング、シームレスな遠隔ロボット手術、迅速なデータ分析の確保。
エッジにおけるユースケースは進化と成長を続け、企業は今日と未来の両方を見据えた設計を求められます。
2029年までに、企業の50%がエッジコンピューティングを利用するようになり、これは2024年の20%から増加すると予測されています[1]。Gartner® Predicts 2025: エッジコンピューティングがエッジAIを加速
データ配置の選択がコストとコンプライアンスに与える影響
企業がAIワークロードの実行場所やデータの保存場所をどこに選択するかは、データ転送料やコスト構造(OPEX対CAPEX)に影響します。また、パフォーマンス、遅延、ネットワークインフラストラクチャの要件にも影響を及ぼします。
エッジで日々生成されるデータ量は、瞬く間に膨大なものになります。例えば、
- スマートファクトリー: 1ペタバイト
- 航空機: 4テラバイト
- 自動運転車: 3テラバイト
そのデータをAI推論のために中央集権的な場所に移動させることは、遅延、コスト、帯域幅に著しい影響を与え、エッジが明白な選択肢となります。
さらに、データ保護とプライバシーに関する法律は現在144カ国で施行されており、今後さらに増える見込みです[2]。規制の中には複雑なものもあり、データの保存場所を慎重に検討する必要があります。例えば、ドイツで収集されたデータを米国内のAWSクラウドに保存することはできず、データはドイツ国内に留め置かなければなりません。これは、AIのために分散型インフラストラクチャが必要となる理由の一つです。
エッジでのAIイノベーションの水準を引き上げる
エッジでAIを活用してイノベーションを推進し、お客様やパートナーとのリアルタイムなコラボレーションや高速接続を実現するAIインフラストラクチャを導入している2社の例を見てみましょう。
AI駆動型の創薬を専門とするバイオテクノロジースタートアップであるNanyang Biologics社は、研究パートナーとのリアルタイムな連携を可能にするため、エッジコンピューティングにEquinix Fabric®のソフトウェア定義型インターコネクションを活用しました。より低コストでスピードと精度を向上させることに繋がったのです。
Nanyang Biologics社の以下ビデオケーススタディ(日本語)にて、エッジにおけるスケーラブルなAIインフラストラクチャが、いかにAIモデルのトレーニングをサポートし、創薬を加速させるかをご覧ください。
Alembic社は、マーケティングインテリジェンスのSaaS企業で、お客様にマーケティング活動に関するデータ駆動型の洞察を提供し、支出の最適化とセールスファネルの改善を可能にしています。同社は、エッジでの高性能な推論を実現するため、AIインフラストラクチャスタックをお客様の近くに配置しました。また、Alembic社はエクイニクスのネットワークサービスプロバイダー(NSP)のエコシステムとEquinix Fabricを活用し、お客様やパートナーへの高速接続を実現することで、最終的により高性能な製品を提供しています。
Alembic社の以下ビデオケーススタディ(英語)にて、同社がAIを活用したデータ分析を通じて、いかにデータ駆動型マーケティングを実現しているかをご覧ください。
エッジでAIを活用してイノベーションを起こしている他の業界には、以下のようなものがあります。
- 金融サービス: トレーディング戦略、不正検知
- メディア&エンターテイメント: デジタルコンテンツ制作、ゲーム開発
- 自動運転車: 歩行者・交通標識検知、車線追跡
- ロボティクス: 製造、建設、ナビゲーション
エッジでの近接性を優先するための4つのステップ
近接性を第一に優先するインフラストラクチャ戦略への移行には、慎重な統合的なアプローチが必要です。ロードマップを作成するために、以下のステップを踏むことをお勧めします。
- まず、現在のAIインフラストラクチャを監査します。 データフローをマッピングし、遅延によって引き起こされるパフォーマンスのボトルネックを特定します。
- 次に、エッジの要件を定義します。 遅延、帯域幅、コンプライアンスなど、リアルタイムアプリケーションの要求を評価します。また、高性能な接続、コンピュート、データストレージに対する自社の要件も確認します。
- 次に、柔軟なマルチクラウドおよびマルチプロバイダのデータ戦略を設計します。 これにより、ワークロードをインテリジェントに分散させ、エッジと中央集権型インフラストラクチャとの間で適切なバランスを実現し、コンプライアンスのために国や地域に特化したインフラストラクチャを展開できます。
- 最後に、相互接続された中立なAIパートナーエコシステムを活用します。 これにより、AIワークロードのサポートに必要とされる広範なパートナーにアクセスできます。
エッジにAIインフラストラクチャを導入する
分散型インフラストラクチャは、企業がAIイノベーションを加速させ、AI戦略を将来にわたって有効に保つのに役立ちます。この記事ではエッジに焦点を当てましたが、AIインフラストラクチャ戦略には、クラウドとエッジのインフラストラクチャを組み合わせ、およびすべてのリソースを安全に接続するための堅牢なネットワークを含める必要があります。
エクイニクスのAIデータセンターは、事業を将来にわたって有効に保てるよう、世界で最も接続性の高い市場に戦略的に配置されています。当社のグローバルな拠点は、世界76の都市圏(メトロ)にまたがる270以上の相互接続されたコロケーションデータセンターに及び、業界をリードする220以上のクラウドオンランプを含む主要なクラウドプロバイダへのアクセスと、複数のデータソースへの近接性をサポートします。
数千ものデータ、クラウド、ネットワーク、AIテクノロジー、そしてGPU as a Serviceプロバイダが、堅牢なエクイニクスのデジタルエコシステムの一部を成しています。Equinix Fabricを使用することで、エコシステムパートナーとの間や、異なる場所にある自社のAIインフラストラクチャ間で、オンデマンドでスケーラブルな接続を確立できます。
近接性がなぜ重要なのかについてさらに詳しく知るには、当社のホワイトペーパー「近接性のパラドックス」をお読みください。
[1] 「Gartner Predicts 2025: Edge Computing Platforms Will Accelerate Edge AI」、Gartner®、2024年11月28日。
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[2] 「データ保護およびプライバシー法が144カ国で施行中」、IAPP、2025年1月28日。